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【スパイダーマン・スパイダーバース感想】ポップカルチャーの波状攻撃に脳髄が痺れる。中毒性アニメーション映像ドラッグの誕生!

f:id:dappe828:20190324005400j:plainアカデミー賞のアニメ長編映画賞を受賞。スパイダーマン・スパイダーバース。いってみましょう。

OKもう一度説明するね?

スパイダーバースは普遍的なヒーロー誕生譚で老若男女楽しめる内容だと思います。人種的マイノリティであるプエルトリコアメリカ人である主人公の少年がスパイダーマンとして、そしてヒーローとして成長するという安心のストーリーです。

しかしこの映画にはストーリーを越えて何度も、映画館で観たくなる中毒性があります。

それはストリートカルチャーを主軸にした様々な表現と音楽が込められた映像にあります。

皆さんはユニバーサル・スタジオの映像アトラクションを体験したことはあるでしょうか。ハリー・ポッターエヴァンゲリオン等の映像を用いたアトラクションは人気を集めています。迫力ある2~3数分の映像のために沢山の人か並ぶのです。

本作スパイダーバースの映像にはUSJの人気アトラクションにも似た気持ちよさ、すなわちドラッギーな快感があります。

スパイダーマンがニューヨークの巨大なビル群のなかを飛び回るシーンの爽快感はなんともいえません。ドラッギー。

そしてこの爽快感を支える秘密は完全にコントロールされた画面作りにあります。

迫力のある映像というとハリウッド映画大作トランスフォーマーシリーズを例にしてみましょう。精密に描写された巨大なロボット生命体同士がこれまた精密な宇宙船のなかで格闘しその足元では小さな人間たちが逃げ惑う。激しい爆発と破壊。

派手です。大迫力です。しかし見てて疲れます。画面の情報量が多すぎて何を観客に見せたいのか分からないのです。

スパイダーバースのスパイダーマンがニューヨークのビル群を飛び、行き交う車の中を駆けるシーン。確かに背景はしっかり作られ実写と見間違うほどです。しかし画面の奥行に注目すると空気遠近法の要領か書き割りのようにペッタリ、薄い背景になっているのです。

そのことにより、手前のキャラクターやその周囲の背景に意識を向けることができ、観客はストレスフリーに画面の情報を受け取れるのです。

OKもう一度説明するね?
ここからはスパイダーバースのみに見られる新しい映像表現にもっと突っ込んでみます。

まず制作プロデューサーも言及していましたが、スパイダーバースはアニメーションでありコミックスでもあるということです。

映画冒頭にはコミックコードと呼ばれる映倫に対する漫倫がどんっ!と出てきます。制作者はこれから始まるのは漫画なんだよ!と観客に宣言しているわけですね。

主人公マイルズが蜘蛛に刺されスパイダーマンになるとコマ割風に絵が分割されたり、キャラクターのセリフや心情が吹き出しとなって表現されはじめます。何だったらかのカルトアニメ、フリクリのように完全に動く漫画のようになっているシーンも出てきます。

またシーン全体に昔のアメコミ特有の印刷の荒さゆえに見えるドットを効果的にテクスチャとして使用。

なにかキャラクターの感情表現が激しく揺さぶられるシーンでは版ズレと呼ばれるcmykの色味がぶれて描かれたり。

普通ならカメラに近い出前の人物をぼかしたりするところでも、版ズレや線を二重にして表現していました。

極めつけはアクション中のマイルズに電車の光りが当たった瞬間、色味は白と黒となりキャラクターや電車が実線で描写されるところ。
まるで日本の白黒漫画そのものです。

またキャラクターには3D動かしたあと、手書きでレタッチが加えられ、ディズニーアニメの完全に統一されたものとは違う、シーンごとに個性や味わい深さが出ています。

OKもう一度説明するね?
スパイダーバースはマルチバースという、自分の世界とは少し違う平行世界のスパイダーマンが一同に会します。

そのスパイダーマンたちがビジュアル的にとっても曲者で白黒の世界から来た奴やロボットを操る萌えアニメ風の女の子、カートゥンから来たペターと薄い2D感あるブタ。

萌えアニメ風の女の子は髪の毛が日本のアニメのようにまとまり感とテカりで表現され、目元もマイルズの世界のキャラクターと比べると随分簡略化されてます。

ブタにいたっては物理法則までもカートゥン化されポケットからハンマーを出してそれが急に巨大化し、なおかつ軽々振り回したり。手から滴る水が滴の形でぼたぼた落ちたり。まるでトムとジェリーです。


これだけ世界観が入り交じっても違和感なく画面にきちんと統一感が持たれているということは本当に驚異的です。


注目すべき点は全て書きました。後はこの映画を体験するだけ。

あ、吹き替え版がオススメです。宮野真守のくたびれたピーターBパーカーは本当に最高でした。